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02 認知機能リハビリテーション その2

認知機能リハビリテーションは、週2回、平日の午後2時間なのだけれど、仕事をどうするか。。。

大地は電車に一人で乗れなくなっていた。乗れたのかもしれないが、認知機能が低下し、海馬に異常があるならば、場所や位置の把握は難しいに違いない。「電車だったら絶対に行かない!」と言っていた。なので、どうしても、私が送っていかなければならない。

職場の上司には、大地の病気のことは話してあったので、理由を話し、仕事を辞めるか、週3日のパートになるかなどの話もしてみた。けれど、しばらくの間、リハビリの日は午前中に2時間だけ働き、早退して病院へ行くということで良いことになった。もちろん欠勤扱いになるし、何より時間的に忙しく、大変な生活になることは想像できた。それでもどうしても私は大地にリハビリを受けさせたかった。

大地は、規則正しい夜型生活を続けていたし、カードゲームを友だちとやりに行ってるし、買い物や散歩に私と出かけている。妄想も、なんとなくわかってきたようだったし、警察官試験という目標も見つけた。けれど、何かが違うのだ。

以前の大地は、とても元気な子だった。けれど、この時の大地は、なんというか、抜け殻のような感じ。覇気がなく、ただそこにいるだけという感じのオーラとでもいうか…。

認知機能リハビリで、このような状態が良くなるかどうかはまったくわからない。

けれど、悔いのないよう、やれることは何でもやるのだ。そう決めていた。

国立の病院は、自宅から車で20キロ、1時間ほどのところにあった。職場は、病院とは反対の方向で、毎日車で片道10キロ30分。リハビリの日は、往復60キロ運転することになる。

リハビリの日、私が仕事から帰ると、大地はまだ寝ていた。昼ご飯を作り、大地を起こして食べさせて、すぐに出ないと間に合わない。

それまで、午後2:00~5:00くらいに起きていた大地を、昼前には起こした。

大地は、とてつもなく眠そうに起き、髭を剃ったりして、なんとか身だしなみを整えた。

「車の中で寝てればいいから!」と言って車に乗せたが、車の中は落ち着かなくて眠れないのだという。

大地はスマホにイヤホンを付けて曲を聴きながら。私は、カーラジオを聴きながら、道が混んでいるときは遅れるんじゃないかと少しヒヤヒヤしながら、リハビリに通った。

病院に着くと、駐車場のすぐ目の前に、リハビリをする病棟があり、大地は一人で行くことができた。

私は、大地がリハビリの間、病院の中庭で、缶コーヒーを買って、スマホで統合失調症について調べたり、本を読んだりしながら過ごした。

病院は、若葉から深い緑色に変わったばかりの木々の中にあった。そして、中庭から空を見上げると、5月の青い空が、何もなかったかのように、何も変わらずにあった。

さっきまで、仕事でばたばたしていたのが嘘のような別世界。

仕事をしていたら、こんな風に空を見上げることなんてなかったかもしれない。ゆったりと、風を感じながら、コーヒーを飲み、本を読めるなんて…。

こんな時間を与えてくれた大地に感謝しなくちゃ。

そう思った。

リハビリが終わる時間になると、私は車に戻り、大地を待った。

大地は、表情が硬いまま、眠そうなまま、戻ってきた。

「どうだった?どんなことするの?」

帰りの車の中で大地に聞いたが、

「あ~、なんか、ゲームみたいな感じ。」と、簡単に説明をしてくれた。

車の中では、信号で止まる度に、私は大地の横顔を見た。

何か変化がないかな?と、注意深く観察した。けれど、見ていることが分かると、「何見てんだよ!」と大地がイライラする様子なので、気づかれないように見た。

変わった様子はない。今まで通りの、眠そうでだるそうな、面倒くさそうな、硬い表情。

そりゃそうだ。そんなに簡単に良くなったら、悩む人なんていない。

私は、焦らない!慌てない!と、自分に言い聞かせて、こうして息子とドライブ出来ることを、楽しむことにした。

大地は、格別にそのリハビリが気に入ったわけでもなく、相変わらずめんどくさいと言い続けていたが、予定の3か月間、きちんと通い続けた。

03 認知機能リハビリテーション その3


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コメント

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