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08 選択

長男が、病気を発症して、どうすればいい?って、考えた事は何度も何千回もあった。
何がいけなかった?誰のせい?あの時こうすれば…

その度に、「過去を振り返っても仕方ない。これから先の、大地にとっての、最高の最善の選択をしよう。」そう自分に言い聞かせた。

何かしらの行動をしなければならない。

仕事は辞める?パートとして働く?
離婚する?別居する?
一人暮らしさせる?姉と2人暮らし?
学校行かせる?休学?転校?退学?
再入院させる?自宅に1人でおいといていい?

退院して、私が仕事に行ってしまうと、日中は大地がひとりになる。他の子どもたちの春休みも終わっており、あてにすることはできない。

主治医の先生に聞いた。
どうすることが、病気の回復にいちばんいい環境なのか?

退院後はお母さんがそばにいた方がいいかもしれない、とか?           逆に、そばにいない方がいいかもしれない、とか?

先生に言われたら、そのようにしようと思っていた。

正しい答えなんて人それぞれだし、そんな事聞かれても先生もわからないかもしれない。でも、もしかしたら、経験的にどういった環境が、回復しやすいとか、知っているかもしれない。

何でも良かった。
先生の話から、方向性を探るヒントでもあればと、すがるような気持ちだった。

主治医の先生は、
「ひとつだけ言えるのは、お母さんがどんな選択をしたとしても、それは正しいということです。」と。

ヒントすら与えられず、この迷いの闇の中から抜け出せないのかと、がっかりした反面、先生の優しさも伝わってきた。

この病気の治療に、絶対的な正解はないのだ。100人いれば100通りの症状と治療。そして、環境。

主治医の女医さんは、いつも淡々としていて、笑顔もなかったし、クールな雰囲気だったが、私が、後悔しない生き方ができるようにという、思いやりのある言葉だったように思う。

私の選択は、正しい。

発症して間のない今、大きく環境を変えることは、大地にとって良くない気がした。家庭環境は、もう少し落ち着くまで、今のままでいこう。

仕事は…  私自身が、大地のそばにいないと不安だった。何かあったらどうしようと考えると、そばを離れてはいけない気がした。けれど、大地は、ひとりで家にいることに、まったく不安はないらしかった。

もう少し、今のまま、フルタイムで働こう。仕事をしている間は、忙しくて、大地の病気のことやこれからの事など忘れていられた。今の私の不安定な心の状態には、仕事をしている方がいいかもしれない。

私は毎朝、なかなか起きられない大地に「学校行くって決めたんでしょー!」と声をかけ、車に、大地と大地の自転車を乗せて、高校まで連れていき、そこから職場へ向かった。

帰りは、大地は自転車で自分で8kmの道のりを帰ってきた。

私は、仕事が終わって家に帰ると、毎晩、大地と犬の散歩に出かけた。

普段の家事にプラスして、ほんの少しやる事は増えたけれど、大地との20分ほどの散歩は、一日をどんな風に過ごしたか聞けたり、色々と話ができる大事な時間だった。

あの時、仕事や家庭環境の事で、迷い悩み考えた挙句に、結局何も変えなかった。

自分に、この選択で正しいのだと言い聞かせながらきた。

この先も、あの時こうすれば良かったとか、ああすれば良かったとか、思う事はあるかもしれないけれど、「選んだ道が正しい。」そう思うことで、過去を振り返り嘆く時間は、減るように思う。

09 衝動 

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