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10 次の一歩へ


統合失調症を発症して2年目

高校を卒業してからの1年間
17才11か月で発症した大地は、20才になろうとしていた。
昼夜逆転の生活は変わらず、毎日、午後2:00-5:00頃起きて、風呂に入り、ご飯食べて、友だちと遊び、夜11:00頃帰宅してから、一緒に散歩に出かけ、帰宅後ご飯を食べ、携帯でアニメを見て、寝るのは朝方、午前3:00-5:00。
そんな生活が続いた。
何も変わらないように思えた。
一歩進んだかと思うと、半歩さがる。
時には、半歩進んだかと思ったら一歩さがる。まったく、前に進んでいないのではないかと思えるような歩みだった。
けれど、振り返ると、寝るだけの生活から、毎晩の散歩が始まったし、
遊戯王カードを始めて、友だちと遊べるようになった。
ネットで、カードの売買もするようになった。
カタツムリか亀のような速度だけど、前に歩いているのだ。
そして、大地は警察官試験を受けることにした。
まったく勉強が進まない大地に、私は、国立病院の研究を受けてみないかと勧めてみた。
家族会の講演会で、認知機能リハビリテーション(NEAR)についての講演を聞いたことがあるのだが、それを受けさせたいと思っていた。統合失調症早期外来というところで行っている、研究のひとつだ。
その効果があるかどうかは、研究している最中であり、絶対に良くなるという保証はない。けれど、今できる限りの医療を受けさせたいと、かねてから思っていた私にとって、研究でもなんでも良かった。
それで少しでも良くなったら、こんなラッキーなことはない。
講演を聞いたばかりの頃、大地に話したことはあったのだが、その時は、陰性症状で寝てばかりの真っ只中だったから、大地は「めんどくせ~」と言って、まったく話すら聞かなかった。
けれど、あれから数ヶ月。この時の大地は、試験を受けようという意欲が出始めていた。
「この治療は、記憶とか集中力とか、そういう認知機能を回復させるためにいいらしいよ。今、試験勉強してもはかどらないでしょ?少しは良くなるかもしれないよ。」
この時も、大地は、相当めんどくさがったが、現金なもので、
「あ、クオカード5000円もらえるって!」と言ったら、
「マジで?じゃ、やろうかな。」
研究対象として、このとっかかりの理由はどうかな…?とは思ったけれど、とにかく今までの規則正しい夜型生活から、少しばかりの変化を求めて、大地と私は、「認知機能リハビリテーション(NEAR)」に申し込むことにした。

統合失調症のLINEグループがあります。
家族のLINEグループ、当事者のLINEグループ、雑談のグループなど、他にも色々あります。
https://schizo.love/?p=34
LINEグループなので、困ったとき、辛かった時、話したくなった時、いつでも誰かが応えてくれます。もちろん既読スルーもOK。退室も自由です。
もしよろしければどうぞ♪

コメント

  1. […] 発症から1年10ヶ月。 大地は、勉強を始めた。 警察官試験を受けたいという事だった。 1日2時間程度だけれど、警察官の試験問題集を開いて、 「覚えられね~」と言いながら、頑張っていた。 発症当初、警察官が出てくる妄想があったから、これまでも、大地は時々、 「警察官になる。自分を待っている人がいるから。」という話をしていた。 男性恐怖症の女の子がいたということは、妄想だと気づいたようだったけど、警察官の方は、妄想だということがまだわかっていないんだろうか…。 以前の大地は組織犯罪にかかわる部署で働きたいのだと言っていた。 これも、妄想でヤクザが出てきていたから、関連してそうなっていたのだと思う。 大地に聞いてみた。 なんで警察官になりたいの? 「う~ん。なんでだったかな…。」 大地は、本当にわからないというような不思議そうな顔をしてしばらく考え込んでいた。 公務員で給料もいいし、オレ走るの早いし、力があるから、そういう仕事が向いてるんじゃないか…。 やっと出てきた答えは、そんな感じだった気がする。 こだわって、どうしてもなりたいという割には、そんな雰囲気の理由だったから、たぶんまだ妄想も関係しているのだろうなとは思った。 警察官で統合失調症の人はいるだろうか。。。 おそらく、試験に合格し、仕事をしながら発症した人はいるかもしれない。 けれど、統合失調症という病気でありながら、試験に合格した人はいないのではないだろうか。 そして、万が一試験に合格しても、当直などがあり、ストレスと不規則な生活を強いられる仕事は、この病気の人には向かないのではないだろうか。 ただ、警察官の受験要綱には、「精神障碍者には受験資格はない」とは書かれていない。もちろん、そんな事を書いたら人権問題になるだろう。  試験は受けられる。けれど、試験前のストレスで、再発してしまうんではないか? ダメだった時に、不合格だった時に、大地がどんなふうに傷つくのか…。 そんな事を考えると怖かった。 けれど、本人がやりたいと言うのを、止める権利が私にあるだろうか。 「やるだけやってみな!」 大地には、病気を理由に、色んなことを諦めてほしくなかった。 不合格でも、ダメでもともとじゃないか。 試験を受けたい理由が、妄想だったとしてもいいじゃないか。 結果ではなく、そこまでの道のりで努力したことに価値がある。 いつか、大地もその事に気づくと思う。 勉強すると言って机に向かいながらも、まったく集中・記憶できず、2時間かけても問題集の1ページの半分程も進まないらしい。 認知機能がまだ回復していないのだ。 けれど、大地は新しい一歩を踏み出した。 「がんばりなー」 私は、大地が警察官試験を受けることを応援することにした。 10 次の一歩へ へ […]